浜辺の歌
[2025.07.09]
テレビを付けていると懐かしい唱歌「浜辺の歌」が流れていました。それは、天皇が皇后両陛下と共にモンゴルを訪問されており、大統領夫妻主催の晩餐会において天皇陛下がビオラで演奏されたものでした。日本を代表する歌で、聞いていて心が和む叙情的な曲だと思います。この浜辺の歌を作詞したのは林古渓で大正2年に東京音楽学校の学友会誌に発表されました。作曲は成田為三で当時は東京音楽学校の22歳の生徒でした。成田は後輩である倉辻正子にこの楽譜を「いとしの正子にささぐ」と付記して贈りますが、正子から楽譜は「私には決まった人がいます」と言う手紙と共に送り返されたようです。さて、林古渓の姪である俊子は子供の頃に結核に罹り、湘南のサナトリウムに入院していました。林古渓は何度かサナトリウムを訪れ見舞いに行っています。彼も結核に罹患していましたが治癒しており、この湘南の海岸の浜辺をさまよいながら、俊子はまだ治らないのだろうかという悲痛な気持ちがこの詩には込められているようです。でも、俊子は長い闘病の甲斐も無く大正11年に19歳の若さで亡くなってしまいます。その様な背景がこの歌にある事を知ったら、単なる心地よい美しい曲としてだけでなく作者の心の機微に触れることも大切だなと思いました。